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世界一周ツーリング日記  1995年6月〜1998年6月
64 イタリア 1996/10 イタリア

 

寒い日だった。南へ向かう。フィレンツェの旅行代理店でサルディーニャ島に渡るフェリーのチケットを買い、さあもうここには用は無いと町を出ようとしたら突然大きな教会が現れた。

あまりの美しさに驚き、やはりフィレンツェは美しい町だと思った。黄色く色づいた街路樹がまた映える。
町を見下ろす高台からの眺めは素晴らしかった。更に南下する。山々は紅葉していてきれいだ。もうすっかり秋だなあ。
やっと海に出たがもう夏の風情は無く、多く見かけるキャンプ場に人影は無かった。
11時のフェリーは一晩かけてサルディーニャ島に向かう。
7時頃目が覚めた。従業員がおせっかいにも全ての部屋のドアをノックして回っている。
サルディーニャ島は目の前だった。通路には気の早い人たちがもう下船準備をして到着を待っている。

9時半に到着。島は晴れてはいたが風が強かった。青い空と青く美しい海。今までのイタリアとは全く風景が違っていた。大きな町は無く、家々はぜいぜい2階建てでパステルカラーで塗られている。どことなく中南米と似ているな。その家々の屋根からはまるでアメリカアニメの幽霊のような形をした煙突がニョキニョキと生えている。北部の海岸線からはフランスのコルシカ島が見えた。
寒かったので小さな町で安いホテルに泊まる。ホテルのシャワーからはお湯がチロチロとしか出ず、身体を暖めるには至らなかった。ナポリで会った家族に電話を掛ける。

山の斜面に小さな町がへばり付いていた。そこが彼女がが住む町だった。町に入ると道は凄く狭くてクネクネとしてまるで迷路のようだ。あまりの複雑さに笑いが出てしまう。メキシコに銀細工で有名なタスコという町があるがそこを思い出してしまった。昼過ぎに電話を掛けると彼女はすぐにやって来た。3ヶ月前にナポリで会って以来だ。相変わらずかわいい。小さな村の小さな広場の近くに彼女の家はあった。とりあえず1階にある車3台!が入っているガレージにバイクを入れさせてもらう。
玄関には彼女の母親が立っていた。「チャオ!」ちゃんと覚えていてくれた。前は英語が出来る彼女としか会話が出来なかったが、だいぶイタリア語に慣れ、今はなんとなく会話が成立しているのがウレシイ。
このサルディーニャ島には見所がたくさんあった。自然もいいしローマ時代の遺跡まであった。世界を旅行するといって日本を出てきたがイタリアはよく知らなかった。ブーツの形をしたイタリアの脛の前に2つの大きな島があったのだ。ブーツのつま先にあるシシリア島は知っていたが他は知らなかった。彼女達は呆れていた。結局泊めてもらうことになった。
暗くなってから彼女の女友達がやって来て散歩に誘われた。村の広場に行くとなぜか若者がたくさんたむろしていた。彼女が友人と会う度に紹介される。
「ペンフレンドの1人なの?」
「違うわ。ナポリで会ったの」
彼女は世界中にペンフレンドを持っていて年に150通くらい書くといった。遊ぶ所がない小さな村では夕方に広場に集まって友人らと過ごすのが習慣らしい。
彼女の家に戻ると「今日はサルディーニャの料理を食べさせてあげる」と母親が言った。具だくさんのパスタもワインも何もかもが自家製だった。素晴らしい。やはり食後に甘いデザートが出てきた。
父親は9時半に夜勤の仕事に出かけていった。結局午前2時近くまで話をした。

9時頃起きる。カフェオレと菓子パンの朝食を頂く。
今日は死者の日ということで休日らしかった。墓参りに行くらしいので一緒に連れて行ってもらった。

墓石は花で飾られている。死んだらまず地中に埋めて10年経ったら掘り返して、骨を小さな30Lくらいの箱に入れ直すらしかった。1年前のグアテマラでは墓はやはり花で飾るが、墓場で凧を揚げていたな。
名残惜しいが昼過ぎに彼女の家を出た。その日は海辺でキャンプをした。

翌日ローマの遺跡などを見ながら走り、昼頃島最大の町に着いた。ここからアフリカのチュニジアまでフェリーが出ている。しかしフェリーが出るのは明日の夜だ。とりあえず安宿を探して町歩きに出た。しかし特別興味を引くものはなく、映画「ツイスター」を見て暇を潰す。退屈だ。

翌日近所の遺跡を見に行き午後チュニジア行きのフェリーチケットを買う。約100ドル。
乗船前にベッティーナに電話を掛けた。電話口の向こうからいつもの元気そうな声が聞こえた。
「今どこにいるの?」
「カリアリ。今からチュニジアに行く船に乗るんだ」
「あの後どこかへ行った?何か見てきた?」
「見た見た。今日遺跡を見てきた。きれいな所だな」
彼女と話していると何か切なくなってきた。
「君の両親にありがとうと言っておいて」
2人も会えてよかったって言ってたわ」
「手紙書くよ。どこからでも」
「待ってるわ。あなたの事忘れないからね」
「オレもさ」
もっともっと喋りたいのに言葉が出てこない。
「・・・じゃあ行くよ」
「元気でね」
どうしたんだろう。切なくてたまらない。出会いがあって別れがあるのは当然だし、特に旅をしているのならそれの繰り返しじゃないか。もう移動移動ばっかりの毎日に疲れたのだろうか?
午後7時に船は港を出た。町が、サルディーニャ島がどんどん離れていく。

 

 

 


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