ブログ 自然 オートバイ 写真 プロフィール リンク
世界一周ツーリング日記  1995年6月〜1998年6月
59 フランス 1996/8 フランス

 

イギリスから船でフランスのカレーに着いたら、パスポートチェックも何もなかった。ヨーロッパ大陸側に戻って来たら幾分風が暖かくなったのは気のせいだろうか。
バイクのチェーンとスプロケットがかなり磨耗しているのでこのヨーロッパにいるうちに交換しておきたい。
バイク屋を探すがなかなか見つからない。やっとのことでホンダのディーラーが見つかった時にはもう閉店間際だった。自分のバイクのスプロケットとチェーンの在庫を確認してもらうと、在庫は無いが注文すれば2日ほどで入るらしかった。純正品で揃えると300ドルかかり、社外品では140ドルだった。とりあえず納得し、その日は近くのYHに泊まる事にした。同室だった陽気なスイス人ライダーは足が悪いにもかかわらずたくさんの量の荷物を持っていた。

翌朝は暴風雨!だった。とにかく昨日のバイク屋に行かなくては。
イギリスの朝食と比べるとあまりにも貧弱でセコイ、クロワッサンとカフェオレだけという朝食だった。

すごい風雨の中を走ってバイク屋に辿り着くと、良く来たなあという感じで出迎えてくれた。
改めてバイクのパーツを注文しようとしたら翌日に入るのはフロントスプロケットだけだった。なんてこった。
すると店内にいたオジさんが話しかけてきた。名刺をもらうとAFAM の人だった。
AFAMは日本でもアルミのリヤスプロケットを販売している。そのAFAMにも前後スプロケットとチェーンが入ったキット売りがあるらしく、自分のバイクに合うキットがあるか色々と調べてくれた。
その結果バイク屋には無かったが、AFAMの会社には合うのがあるかもしれなかった。
その会社はここから南東に100km。よし、行こう。
YHに戻り、出発しようとしたらスイス人ライダーも出発すると言い出し、ついでに荷物を一つバイクまで持って行ってくれといった。確かに一度では持って行けないくらいの量だった。
いいよと一つのザックを担ぐとズシリと重かった。
「何が入ってるんだ?」
「本だよ。休みに本を読むのが好きなんだ」と今読んでいる分厚いハードカバーの本を見せてくれた。
こんなに本を持って旅行しているのか?日本人旅行者でも本を持っている人は多い。しかしその殆どは小さい文庫本だ。欧米人旅行者は分厚い本をそのまま担いでいる人が多い。

雨はまったく止まず、風は相変わらず強く、そして寒い。午後1時頃ルモンの町に着いた。着いたはいいがAFAMの場所はまったく分からない。バイク屋に聞いてもさっぱりだ。
ヤマハのバイク屋があったのでまた聞いてみる。
「ハロー」。50歳ぐらいのオジさんがいた。
ぐっしょりと濡れたAFAMの名刺を差し出し、「アファムはどこですか?」と聞いてもさっぱり通じない。
するとその息子と思しき男性が出てきた。彼は得体の知れない日本人の要望を理解してくれ、車で案内してくれることになった。
街角をあちこちと曲がり、やっと着いた。そこは小さな工業団地か倉庫街といった感じでAFAMの看板どころかAの字も無かった。彼に連れて来てもらわなかったら絶対に分からなかった。
彼に「メルシー、メルシー」と礼を言うとうれしそうな顔をしながら去っていった。ああ、よかった。
白い扉を開けると、やっぱりそこは倉庫だった。スプロケットやチェーンが山のようにあり、20〜30人ほどの人達が働いていた。自分の事はもう連絡が入っていたらしく一人の人が対応してくれた。
「このバイクに合うキットがありますか。交換は自分でやります」。
「まあ、バイクを中に入れなさい」。
フロントスプロケットを外すと、もう歯が半分以下に減っていてみんなを呆れさせた。3万キロぐらい走っただろうか。レーサーのXR250のスプロケットはスプラインの山と谷の幅が違っていて合わなかった。倉庫の奥からいろいろな種類のスプロケットを探してもらい、やっとXLR250Rに合うスプロケットが見つかった。
それはなんとNSR125R用だった。彼はやれやれあったかという顔をし、僕はフーッと胸をなでおろした。
428チェーン用15/50Tの3.125から520チェーン用13/38Tの2.95になった。同じスピードだったらエンジン回転数が7%下がるので燃費が向上するかも。
作業をしているとみんな興味があるのか色々と聞いてくる。どれくらい旅しているんだ?どこへ行ってきたんだ?タイヤはツルツルじゃないかetc。
作業が終わり、「ありがとうございました。いくらでしょうか?」と尋ねると「会社の人間と話したんだが、無料でいいということだ」。え!全てタダ!なんとありがたいことだろう!
そうしたらAFAMのステッカーをベタベタ貼られてしまった。普段自分のバイクにステッカーを貼るのは嫌いだが、おう、どんどん貼ってくれい!という気分だ。彼らの商売仇のレンサルのバーパットもAFAMのバーパットに変わった。
最初は「バイクで世界一周なんて大したことではありませんよ」と言ったが、彼らが喜ぶように「でも実際にやるのは大変なんですよ」と言い直したのはいうまでもない。
最後には帽子とTシャツとチェーンスプレーも貰った。ありがたいことだ。厚く礼を言ってまた雨の中走り出す。

 

 


TOPに戻る

inserted by FC2 system