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世界一周ツーリング日記  1995年6月〜1998年6月
48 ブラジル 1996/6 ブラジル

 

朝から天気がいい日だった。
このオリンダ周辺にはきれいなビーチがたくさんあるので、YHで働く女性2人と近くのビーチに行くことにした。

ビーチに着いたのが昼近かったのでまずは昼食を食べようとレストランを探ながらビルの谷間を歩いていた。
不意に肩から提げていたウェストバッグを後ろからぐいと引っ張られた。
道を聞くにしては強引な奴だなと思って後ろを振り向くと、黒人の少年が必死に僕のウェストバッグを引っ張っていたのだ。ひったくり!だった。
こっちも手を離すわけにはいかないので(5000円ぐらい入っていた)
「何しやがんだ?」
とぶんなぐった。しかし相手はまったく怯まず反撃してきた!
左手はウェストバッグを掴んでいるので空いている右手一本で戦うしかない。すると後ろからもう一人殴りかかってきた。夢中で右の拳を振り回す。
何がなんだか分からない。何発か当たった。何発もくらった。一体何人いるんだ。
左目にワンツーをもらった。これは効いた。膝が折れそうになる。
しかしぐっと踏ん張って相手を睨むととうとう彼らは諦めてウェストバッグから手を離した。

やっと終わった。一緒にいた女性二人は逃げていて、誰か助けを求めていたそうだ。しかし誰も来なかった。
全部で4人いたらしい。彼らが武器を持っていなくて良かった。殺されなくて良かった。
体中が痛い。履いていたサンダルは両方ともどこか無くなっていた。
足の皮はむけ、顔は腫れていた。もう海水浴どころではなく、裸足でタクシーに乗り宿に戻った。
みんな「どうしたの!」という顔で迎えてくれる。見ての通りだ。
心配してみんなやさしく介抱してくれる。みんな無事で良かった。
ブラジルは貧富の差が激しく、治安がとても悪いというのに。女性二人と歩いていて気が緩んでいたのだろう。
白昼引ったくりに遭っても誰も助けようとはしない。都会の恐ろしさを感じた。
その翌日は同じYHに泊まっていたドイツ人が夜道でピストル強盗に遭った。

殴られた左目は充血が激しく真っ赤な目のままだったので現地の日本人の方から病院に連れて行ってもらった。大きな隣町の市民病院で働くお医者さんだった。
診察室でインターンの学生達に囲まれ当時の状況を説明すると、なぜ歯向かうなんてバカなことをしたのかと諭された。ブラジルでは簡単に人が殺されるらしい。
相手がナイフを持っていなかったのが不幸中の幸いだった。

怪我の跡が痛々しいといっても宿にくすぶっていると退屈してしまう。よく通っていたフルーツジュースのスタンドに足を引きずりつつ行くと、店のオバちゃんが「!!」という予想通りの反応を示した。
引ったくりにあったけどもう大丈夫ですよと説明していつものアセロラジュースを注文した。
アセロラのビタミンCが目に良いだろうか。
まだどの店でも痛々しい目で見られてしまう。

居心地がいいYHだったので結局1ヵ月近く滞在してしまった。その間皆でビーチに行ったり、バイクに乗ったりして楽しく過ごすことができた。おかげでアマゾン川へは行きそこなったが。多くの友人ができて良かった。
ようやくケガも癒えた。

名残惜しくみんなと別れ、53日ぶりにまたサンパウロに戻ってきた。
ここでヨーロッパに渡るフェリーのチケットを買う。2週間、人間1000ドル、バイク500ドル。
安くはないがバイクと一緒に移動できる。食事付きというのもうれしい。

サンパウロのYHにはスイス人の女性が2人いた。
問題がある子供たちをボランティアで世話をしているらしかった。
夜彼女らと映画を見て帰る途中、路上にホームレスの少年らがいた。通り過ぎようとしたが彼女らは無視できないらしく、持っていたビスケットを彼らに与え始めた。
金をせびるホームレスが嫌いな自分は、さあ行こうと急かそうとしたが、やめた。彼女らはそういう子らのためにボランティアで働いているんだった。
「彼、何ていったと思う?自分をあんたの家に連れて行ってくれ。そして一緒に住まわせてくれって言ったのよ。彼らには助けが必要なのよ」。
反論はできなかった。今まで物乞いは全て無視してきた。助けるなんて考えたこともなかった。

帰り道ちょっとビールが飲みたくなりバーに立ち寄った。店内はオバちゃんの客が多い。
彼女らと飲んでいるとこちらをじーっと見る2人のオバちゃんがいるのに気が付いた。
わっ、意識されてしまったと思ったら店主のオバちゃんが我々のテーブルにやってきた。
そして彼女らに、
「あんた達、女は好き?あっちの女性2人があんた達を気に入ったんだって」
え?レスビアンの女性達だったのか。
彼女らが断るとその女性2人は向かいのディスコへと去っていった。
「こんな質問されたの初めてよ」と彼女らはかなり動揺していた。
店主のオバちゃんに「あんたも女が好きなの?」と聞くと
「そう!私は女が好き!」とキッパリとした返事が返ってきた。
「ここは同性愛が多いの、向かいのディスコもそう。ブラジルはすごくオープンでストレートなの」。

YHに戻り、さっきの話を同室の南部出身のブラジル人にすると、
「そう、すごくオープンなんだ。しかしサンパウロとリオデジャネイロはやっぱり特別さ。カウボーイが多い保守的なオレの地方では人に見せたりなんかしない。昔ホモバーができたけど皆嫌がって、石投げて、火ぃつけて、すぐに閉店になった」。

 

 

 


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