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世界一周ツーリング日記  1995年6月〜1998年6月
43 アルゼンチン 1996/3 アルゼンチン

 

ウスアイアを発ち、アルゼンチンからまたチリ領に入り、マゼラン海峡の町へ行く。小さな港町だった。
チリのお金が少なくなったので、両替できるところを探していると町の電話局でできるらしかった。
かわいい女性が一人で店番をしていた。
「いつもこんなに寒いんですか?」晴れてはいるが、風が強くて寒い。
「そうね、充分すぎるほど」
「でも今は夏でしょ?」
「もう秋だわ」えっ、もう秋が始まっていたのか!
「あなたの国はどうなの?」
「春ですよ」
「春!いいわねえ」
こんな何も無い、強風が吹く小さな町の冬なんて何をするんだろう。

対岸のプンタアレーナス行きの小さなフェリーに乗り込む。客室は家族連れも多く平和な空気が流れていた。
フェリーが港を出ると5〜6頭のイルカが見送ってくれた船がマゼラン海峡に出ると、強風が吹き波は7〜8mもうねり荒れ狂っていた。小さな船は成す術もなく木の葉のように揺れまくる。転覆するんじゃないのか?窓の外を水平線が上下にいったりきたりしている。乗客はみんなぐったりとして揺れに必死に耐えている。
船内はダーンという波が船にぶち当たる音とギシギシギシという船が軋む音しかしない。
どんよりとした空気が滞り、時折ウエッだのグッだのと聞こえてくる。椅子の上で横になっているオジさんは、椅子から落ちないようにしっかりとしがみついている。出航前にばりばりお菓子を食べていたオバちゃんは今度はその菓子袋を口に当てている。
椅子に座っていたら確実に船酔いするので、立って船の揺れに合わせて体を常に地球に対して真っ直ぐし、また呼吸も合わせる。ガラガラの客室にもかかわらず一人立って体を揺する自分は奇妙に映ったことだろう。
長い3時間だった。なんとか酔わずに済んだ。甲板に出るとバイクはほとんど倒れかかっていた。
郊外に野生のペンギンがいるところがあった。ペンギンは地面に穴を掘って住むらしい。穴の奥から不安げに外の様子を窺うペンギンが見えた。

何も無い平たい荒野の中に砂利道がずーっと真っ直ぐ伸びている。空が大きい。

岩山と氷河と森が美しいパイネ国立公園で自然を満喫して、今度は大氷河を目指す。
今日も風が吹き荒れる。この強風の中チャリダーが走っているではないか!自転車は風が強いと大変だ。しかもここパタゴニアは常時風速20m近い。自転車の旅はハードだ。ライダーはチャリダーにはかなわない。

カラファテのスーパーで夕食の買い物をしていたらバハの安藤さんとバッタリ会った。
「久しぶりだなあ!元気だった?」
彼とは中米のグアテマラ以来だ。彼はこれから南下してウスアイアに向かうそうだ。これからもっと寒くなって大変だろうな。
牧場の杭に一羽づつハヤブサがとまっている。バイクで近づくとそれぞれふわーっふわーっふわーっと舞い上がっていく。野生のハヤブサなんて初めて見た。

林道を抜けるといきなり巨大な氷河が現れた。「ウオー!」と思わず声が出るほどの迫力だ!
対岸の山の上から谷を埋め尽くす氷河の流れがあり、その先端は湖のこちら側まで達しようとしている。幅数Km、高さ30〜40mの青い、青い氷の壁だ。巨大な氷が時折凄い音をたてて落下する。その音で体が震える程の衝撃が走る。大自然のドラマをこんな真近で見ることができるなんて!どうして氷河の氷はあんなに青くて美しいのだろうか。なんか別の世界に通じていそうな神秘さがある。3時間程氷河を眺めて宿に戻る。

パタゴニアのチリ側は更に強い風が吹いていた。しかも道は川から拾ってきたような玉砂利ばっかりなので、滑る滑る。バハの安藤さんとスイス人のライダーは風でコケたといっていたがやっとその意味が解った。何度風に煽られて道端の深い砂利に突っ込み転びそうになったことか。
東へ東へ走ってアルゼンチンの太平洋側に出るとやっと舗装路になった。
そして見渡す限り牧場しかない道をひたすら2500Km程北上すると首都ブエノスアイレスに着いた。


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