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世界一周ツーリング日記  1995年6月〜1998年6月
39 ブラジル2 1996/2 ブラジル

 

バスでシュガーローフへ向かう。まるで巨大な卵を立てたような一枚岩の頂上にロープウェイが渡してあった。ここは確か映画007/ムーンレイカーに出てきた場所だ。ロープウェイを2つ乗り継いで岩の頂上に着くと、そこからはリオデジャネイロ中のビーチが見えた。ダウンタウンのビル郡の向こうの山には、この間行った大きなキリスト像が雲の合間に見える。
午後ホテルに戻りビーチに行くと今まで以上に人が多く、また今まで以上に海岸にゴミが多かった。しかし人々はゴミの中で泳ぎ、ゴミに囲まれて日光浴していた。小さな子供にはおもちゃがたくさんあって楽しそうだ。とても泳ぐ気はしないのでビーチをひたすら歩く。ホテルでカーニバルのテレビを見ていて気づくと回りはなぜかゲイの男達ばっかりだった。
夜中にヒソヒソ声で目が覚めた。同室のドイツ人がカーニバル会場で仲良くなった女の子を連れ込んでいた。気を利かして外に出ようとしたら「いい、いい」といってまた出て行った。
翌朝、昨日はどうだった?と聞くと路上で少年数人の強盗にあったと言った。中学生ぐらいの少年が割れたビンをかざして「金出せ」と2人の前に立ち塞がったそうだ。しかし彼は身長190cm以上ある大男なのでまったく怯まず、その割れたビンを持った手をガシッと掴むと少年たちは怖がって逃げ出したそうだ。「幸い何も無かったけど一緒にいた女の子が怖かったと泣きじゃくったので大変だった」といった。

2人に別れをいってバスでサンパウロに向かう。トイレ付きの大型バスだったがえらく乗り心地が悪く、またエアコンが付いていないのか蒸し暑い。緑の中を走る。時折通り過ぎる町々の郊外にはやはりバラック小屋がたくさんある。2時間走って30分も休憩して走る。約6時間で大都市サンパウロに着いた。バスはまるで空港のような巨大なバスターミナルにすべり込む。地下鉄も隣接していた。銀色のきれいな地下鉄に乗って中心街に近いリベルダーデ駅に行く。地上に出るとそこは日本だった。看板は日本語だし、鳥居まである。その地区では有名な日本人宿ペンション荒木に泊まる。しかし部屋は長期滞在者の荷物で溢れて汚く、部屋に窓が無いので昼になっても真っ暗だ。これで10ドル以上もするのか。隣のレストランは腹いっぱいになるボリュームなので気にいったが。

食後4人で近くのバーへ飲みに行く。カウンターに座ろうとしたら長期滞在しているおじさんの横がなぜか一つ空いたのでそこに座った。彼は50歳近く、サンパウロで焼き鳥屋で働いて月収2〜3万円とブラジルの平均よりかは多く稼いでいた。そして休みに別の町にいる恋人に会いにいくのが楽しみだといった。ちょっと話が長く、高圧的だなと思ったら、それが彼の席の横が一つ空く理由だった。他の旅行者も「あのおっちゃんと飲みに行くと気を使わなきゃならないのでいやなんですよ」と日本での平均的な若者の反応を示した。自由を求めて旅をしているのに日本でもないこんな地球の裏側の国にまで来て日本的に気を使わなくてはならないなんておかしな話だ。嫌なら断ればいいのにと自分の思考が単純化しているのに気づく。結局バーはおじさん一人でおごってくれた。日本なら大した金額ではないがここでの彼の給料の半分が飛んでいった。

宿には沈没している長期滞在者が多くだらだらとした空気が充満している。暗くて汚い部屋にもじきに慣れるのだろうがそんなものに慣れたくないので宿を出る。さてどこへ行こうか。
リオデジャネイロのホテルで知り合った女性に電話をかけるとなんと同室だったイギリス人のシルバンといるというではないか。車で迎えに来てもらえることになったので地下鉄の駅前で待つ。1時間半ほど待つとシルバンが車ではなく歩いてやってきた。道に迷ったので車を降りて地下鉄で迎えにきたそうだ。彼女は2つ離れた駅にいた。「こんにちは、カロリーナ」「こんにちは、アキラ」とブラジル式の抱擁で挨拶してきた。今まで何度も抱擁の挨拶はしてきたが彼女のはギュッと抱きしめてきて心がこもった抱擁でドキドキしてしまった。
「電話かかってくるのを待ってたのよ」
「昨日かけたんだけどいなかったんだ」
「昨日は出てたの。さあ、行きましょ」
というと彼女はシルバンと手をつないで車に向かった。あれ?いつくっついたんだ?
彼女は20歳、小さくてかわいくて元気ですごく魅力的な女性だ。彼女の運転で市内をドライブし、高級ショッピングモールのファーストフード店で昼食をとる。どうも彼女はお嬢様らしい。
その後何軒か彼女の知人宅へ行く。その度に交わされる挨拶。シルバンは「オレこういうの苦手なんだ」ともううんざりという顔をしていた。
彼女は完璧な英語を話し、しかも英語を教えてもいた。その学校をちょっと見学させてもらう。混雑した中心街ではなく、高級住宅街の中にあるきれいな私設の学校だった。彼女も高級住宅地に住み、自分の車を持ち、また彼女の友人らもそうだ。自分とシルバンは「ブラジルの金持ちという一面だな」と納得しあった。

夜シルバンが泊まっている高級そうなバーやレストランがある地区のホテルに宿をとる。彼と夕食を食べようとホテルそばのレストランに入るとなんと定食が3レアル!安くてしかも凄い量だったので2人して大満足。
「これだよな、これがブラジルの普通の食事だよな」と感激する。観光地コパカバーナは安食堂は見当たらなかったし、高い。今日のファーストフードのパスタも高くてがっかりするものだった。彼はお嬢様相手に散財しているようだった。
この辺はダウンタウンと違って夜も安全だ。バーに入ると若者が多い。一旦ホテルに戻り、シャワーを浴びるとカロリーナがホテルにやって来たというので3人でバーへ行く。若者ばかりの店で、みんな大学生らしく英語もしゃべる。3人でホテルに戻るともう4時半を過ぎていた。

翌朝10時にシルバンの部屋に電話を入れるとやっぱりまだ寝ていた。カロリーナにも電話をすると「こんな朝早くに何なの」と眠たそうな声が返ってきた。近くを散歩すると路上で市が開かれていた。野菜、魚、肉、雑貨品、何でもある。中米や南米北部の国々と違ってえらくきれいだ。肉なんかショーケースに入って売られている。ブラジルってこんなに豊かな国だったのか?世界一の借金国じゃなかったっけ。町を走る車はどれもきれいだし、ポンコツ車なんて見かけない。豪華バスがバンバン走るし、美しいメトロもアナウンス付きだ。コスタリカやチリと変わんないぞ。貧困にあえいでいるというブラジルのイメージを持っていたが変わった。
昼にホテルに戻りそろそろ空港へ行こうとシルバンの部屋へ挨拶に行くと彼はやっと起きたところだった。
「今何時?」
「12時15分」
「やべえ!ちょっと待ってて。10分で用意するから」。
ロビーで待つと彼がやって来た。彼も今日チェックアウトするらしい。来ると言っていたカロリーナを待ったが1時になったので彼に別れを言って空港行きのバスに乗る。

夕方離陸。しばらく飛ぶと緑の大平原になった。3時間ほど飛ぶとやっと風景に変化が現れた。アンデス山脈の上を飛んでいるときに機長のアナウンスがあった。
「ただ今右手にアコンカグア山が美しく見えています」。左側に座っていたのですぐに右側の窓に行くと、雲一つ無いアンデス山脈の山々の中に夕日に照らされた大きなアコンカグア山が飛行機と同じ高さに、威風堂々と座していた。上部には雪が残っている。他の山々と比べても飛び抜けてでかい。6960m。なんという美しい光景だろう。アラスカのマッキンリー山を思い出した。

8時半にチリのサンティアゴに着陸した。やっと日が沈んだくらいでまだ明るい。バスを乗り継いでビーニャデルマルの宿に着いたのは11時半を過ぎていた。

 


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