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世界一周ツーリング日記  1995年6月〜1998年6月
32 エクアドル 1996/1 エクアドル

 

パンアメリカンハイウェイを南に走る。延々ともうどこを走っているかわからなくなるぐらいアンデス山脈の中を上ったり下ったりしながら走ると、やっと山ではない地平線が見えた。それから道路は下りに変わり、まるで地獄まで下りていくかのように下り続けてやっと平坦になった。と同時に一気に暑くなった。

延々と続くドールバナナの農園を抜けるとペルーとの国境に着いた。国境の町らしくたくさんの店があり活気付いている。まだ早い時間だったが国境通過は明日にしてまずはホテルを探し、気になっていたバイクの整備をする。整備をしているとバイク好きな少年が寄ってきたのでちょっと手伝ってもらう。
彼はオマールといってここのホテルに女の子と泊まっていた。翌日そのオマールがこの町を案内してくれることになった。
不意に彼が裏路地に入っていったのでついていくと、その奥には朝から営業しているピンサロがあった。
中を覗くと、ここは動物園か?と思うようなデブとブスとオバちゃん達が暇そうにしていた。別室へ行けば10000スークレ(350円)でできるそうだが金もらってもやりたくない。オマールを見ると彼の目はランランと輝いていた。「中にかわいい子がいるじゃないか。行こうよ、行こうよ」
「行きたくない。デブしかいないじゃないか」
「あんたの分もオレが出すからさあ」
「お前1人で行って来い。待っててやるからさ」
結局彼は諦めたがすごく名残惜しい顔をしていた。
今日も暑い。ごちゃごちゃした商店街の真ん中にあるイミグレーションでエクアドル出国の手続きを済ませる。
ごみがたくさん浮いたどぶ川を渡るとそこがペルーだ。入国の手続きをしているとジョギング姿の白人男性が現れた。彼はチリから約1年、8500kmをなんと自分の足で走ってきていた。奥さんはトレーラー付きのスクーターで伴走していた。これから北に走っていくらしい。すごい人がいるんだな。
ペルーに入ったぞ!

手続きがすべて終わりバイクのところに戻ると「あなた日本人?」といって背が高い欧米人っぽい女性が話しかけてきた。こんなところでいきなり日本語だったので驚いたが、ジュースでも飲みながら話をしようということになった。
「私、日本の東京で働いていたの」
ボリビア人の彼女は日本で数年働いていたらしい。元モデルという彼女は美人でスタイルが良くてうまい日本語を話す。今はここでミニバスの営業をしていた。
「今日はどこまで行くの?」
国境を越えたばかりでまだ何も考えていなかった。
「まだ決めてない」
「じゃあ、海に行かない?」
「海?いいねえ!」
こういう出会いもあっていいだろう。

「私のこと助けてくれない?」
ビーチで体を焼いていると彼女が切り出してきた。
「助ける?」
「私と結婚して。私また日本に行きたいの」
なんということだ。自分と結婚して日本に連れて行ってくれだと?
「それはだめだ。結婚なんて簡単にできる訳ないだろう」
「私もう一度日本で働きたいの。絶対に迷惑はかけないから」
彼女はとうとう本音を吐いた。
「だめだ、だめだ」
日本へ行くために自分を利用しようとしているのか。
彼女と一緒に数日を過ごした。最初は楽しかったがやがて彼女のわがままさが嫌になり、最後にはケンカ別れしてしまった。こういう経験はあんまり欲しくない。

ペルーの太平洋側の海岸線はひたすら砂、砂、砂の世界だった。視界には青い空と砂丘と海しか映らず、黒い道路は砂に飲み込まれそうになりながらも前方に延びていく。横風が吹くとパラパラと砂が顔に当たった。


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