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世界一周ツーリング日記  1995年6月〜1998年6月
29 コロンビア 1995/12 コロンビア

 

午前11時頃コロンビアのカルタヘナ港に着いた。バイクを船倉に取りに行くと、ひっくり返ることなくバイクはちゃんと立っていた。軍人のチェックがあって、そのあと消毒をされた。
「他の国から来たのは全て消毒するんだ。他の国には違うバクテリアがいるからね」
作業員のおじさんはマスクを外して汗を流しながら説明してくれた。

入国はポンポンとハンコをもらうだけで、あっけなく済んだ。コロンビアにバイクで入国するのはすごく大変らしいと聞いていたので無事済んで良かった。入国口に無料のコロンビアコーヒーのサービスがあったので一杯もらう。苦味が強くてぐっと引き締まる感じだ。これからの南米旅行は浮かれるなと言われている気がした。
コロンビアに入ったぞ!

城塞に囲まれた美しいカルタヘナの町に2泊して南へ向かう。朝の道路は混雑していた。のろのろと走っていると後ろからバリバリバリと音がしてオフロードバイクに乗った男が追いついてきた。バイクは80年式ぐらいの古いXT250でタンクはメッキされマフラーも交換してあった。
「でかいバイクだな」
大きいガソリンタンクを付け、大きな荷物を積んでいたからそう見えたのだろう。
「いや、
250だよ」
「いいバイクだな」
「ありがとう。この道をずーっと行けばバランキージャへ行くの?」
「そう、ずっと行けばいい。じゃあな」
彼はそういってアクセルをぐいとひねり、ダダダダダという音を残して混雑する車の群れの中に消えていった。
バイクが好きそうな男だったな。
平野部から山岳地帯になると、道は狭く曲がりくねってトラックが渋滞を起こすようになった。
どんどん高度を上げていくと、どんどん気温が下がってきた。
峠の上からはまるで飛行機から見ているように、下界に小さく村々が見えた。そしてその村の中心には必ず教会があった。

大都会メデジンに着いた。回りは山で囲まれた盆地の下にあり、その斜面にはびっしりと住宅が町の中心をぐるりと囲むように下から上へ延びていた。町にはなんと地下鉄が走っている。中心部はクリスマスの電飾で彩られていて賑やかだった。もうすぐクリスマスだ。
朝の散歩をする。昨夜あれだけ賑やかだった町はまったくクリスマスを感じさせぬほど昼の顔になっていた。レンガ造りの教会があった。中を覗いてみると内部もレンガで造られていてそれはそれは美しかった。3040m程の高さの天井を持つ祭壇の上部はレンガでアーチを見事に造ってあり、ステンドガラスも美しい。クリスチャンの国だと再確認させられる。

  首都ボゴタまではかなりの距離があるので途中、田舎町で一泊した。
何もない町の、普通のホテルの、話し好きなホテルのオバさんに捕まった。旅の話、日本の話をして、そして宗教の話になった。オバちゃんは当然のように
「あなたの宗教は何?」
と聞いてきた。
「宗教は信じてません」
というとすごく驚いた顔になった。宗教の国では信仰を持たないということは極悪人、大バカ者、しまいには人でなしとまで思われると書いた本を読んだことがある。
「んー、日本は仏教が多いです」
「じゃああなたは仏教徒なのね」
「ん〜、そんな訳でも…」
「じゃあ何を信じているの?」
「自分自身かな。ハハハ」
…冗談は通じなかったらしい。
彼女のバッグには聖書が入っていた。
「神を信じる?」話はまた振り出しに戻った。
「日本には仏教ともキリスト教とも違う日本古来の宗教があります。神道といいます」
「そお。どんな神様?」彼女はそれが聞きたかったという顔をしていった。
「山の神様、海の神様、水の神様…。八百万の神様がいます」
唯一つの神しかいないキリスト教を信じる彼女は再び、すごく驚いた顔になった。

暇そうにしているとホテルのオバちゃんが彼女の友人の家に連れて行ってくれた。今日はクリスマス前の子供の日らしかった。各家庭にはクリスマスツリーと小さな人形がジオラマみたいに飾ってあった。程なく白い衣装を着た牧師さんがやってきて、その家にいた子供みんなを集めて説教を始めた。大人たちはそれを復唱している。するといきなり牧師さんはギターをかき鳴らして歌いだしたではないか。あっけにとられて周りの人を見ると一緒に歌っている。賛美歌なのだろうか。しかし牧師さんはえらく陽気に歌っているので何か変な感じだ。
歌が終わると子供たちにお菓子とケン玉が配られた。へえ、こんな行事があるんだと驚いた。

夜にホテルに戻ると見慣れぬバイクが停めてあった。ブラジル産のTS125だった。コロンビア人のカップルで二乗りで旅行をしていた。
何も無い田舎町だがいい人たちに出会えてよかった。


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