ブログ 自然 オートバイ 写真 プロフィール リンク
世界一周ツーリング日記  1995年6月〜1998年6月
27 ニカラグア2 1995/11 ニカラグア

 

翌日その火山に向かって出発。湖の対岸にあるその町に近づくほどに噴煙は大きくなってくる。
70km離れたレオンという町は火山灰に覆われていた。火山灰がパラパラと音をたてて降る。町のすべての人が火山灰よけの為に帽子やビニール袋を被っている。

一軒のホテルを見つけて値段を聞き、「70コルドバ!高い!」と露骨に高いという顔をしたら50コルドバに下がった。
火山見学ツアーはないかと町を歩くが、火山灰で困っているのにそんな浮かれたものはありそうになかった。
とりあえず情報を得ようと、市庁舎に行って火山のことを聞こうとしたら
2階の部屋を案内された。
中には迷彩服をきた
2人の男がいた。なんか雰囲気が違うなあ。
「火山の情報を知りたいのですが」。
すると迷彩服男はさらに奥の部屋へ導いた。そこには大きな机があり、周辺の地図が貼ってあった。
「火山は今噴火しておる。そして風はこの町に向かって吹いている。火山付近の住民は避難した」
と地図を指しながら説明してくれた。ああここは火山対策本部らしい。僕はとんでもなく場違いなところへ来てしまったようだ。
「火山へは北周りで行くしかない。その村から見る火山はそれはそれは美しいぞ」
あれ?
「近くの山に登って見ることは可能ですか?」
「非常に難しい。それに今は禁止されている」
「バイクを持っているんですよ」
「それならその村に行くのは簡単だ。ここからたった
26kmしか離れていない。村から火山に向かって未舗装路が続いている」

牧歌的な景色の向こうにゴウゴウと黒煙を吹き上げる火山があった。噴煙は空高く数千メートルまで昇っている。
火山まで数キロしか離れていない。すごい景色だ!
今目の前にある景色が現実のものだなんて信じられないくらいだ。
やがて日が傾いて辺りが暗くなってくるとその噴煙の中にある赤いものが浮き立ってきた。その火山からはびゅうびゅうと赤い溶岩が、まるで噴水のようにとめどなく吹き上がってくる。
すごい、真っ赤だ!暗くなると黒い噴煙は夜の中に溶け込み、変わりに赤い溶岩だけが美しいほどに浮き上がる。
ほとばしる地球内部のエネルギーに圧倒されてしまう。地球は生きているのだ。
この風景は一生忘れないだろう。

レオンの町に戻ってくるとやはり火山灰が降っていた。町はほこりだらけで霞んでいる。ホテルに戻って灰だらけの体をシャワーで流しさっぱりして外に出る。手近にあった屋台で定食を食べる。見ると頭から火山灰よけのビニール袋を被った店の子供が、客から下げた皿を洗わずに汚い布で拭いていた。ということは今自分が食べているこの皿も彼の右手に握られた汚い布で拭かれたものだ。一瞬うっ、となったがまあいいかと全部たいらげた。
昼間教会のそばで灰ですすけたみやげ物を売っていた人たちは夜は荷物を片付けてビニール袋をかぶせ、その中に寝ていた。

 


TOPに戻る

inserted by FC2 system