ブログ 自然 オートバイ 写真 プロフィール リンク
世界一周ツーリング日記  1995年6月〜1998年6月
17 メキシコ 1995/7 メキシコ
港町マサートランまでまた戻り、それからグイッと内陸へ、メキシコ高原の方へ向かう。
程なく険しい峠道になり、右に左にぐるぐると道はうねりだした。曲がれど曲がれど先は見えない。
まるで岩の屏風の間を縫って走っているかの様だ。自分がどの方向へ走っているかさえまったく分からない。
いつの間にか標高2000メートル近くまで上っていた。ガソリンが心細いので入れたいが、ぽつりぽつりと小さな村が現れるだけでガソリンスタンドは見当たらない。
そんな小さな村の、一軒の家の軒先に小さく「ガソリン」という文字が書かれた看板が下がっていた。
これがガソリンスタンドか?とても似つかわしくない普通の家だが・・・。
その家の前でバイクを停めると中から少年が出てきた。ドラム缶のガソリンを売ってくれるという。そういうことか。
キコキコと手回しのポンプでガソリンを汲み出して、布を被せたジョウゴで入れてくれた。どうやらフィルター代わりらしい。
しかしなんか怪しいので3リットルだけ買う。

永遠にこの道が続くのかと思ったその峠をやっと上りきると急に道が平らになった。まさしく高原だ。
そのまま走るとデュランゴの町が現れた。
人口35万人!あまりに大きな町と、それにしてはそれをつなぐ峠道のあまりの険しさに驚いた。
中心街付近の駐車場付きのホテルに止まることにする。

バイクを駐車場に入れていたら日本語を話すオバちゃんが現れた。
彼女はリサという名前で、日本人と結婚して昔日本に住んでいたことがあると言っていた。
彼女の日本語はかなり怪しいが、それでもこの町で日本語の先生をしていた。
彼女はすでに離婚をしていたが、自分の日本語が昔を思い出させたようだ。

翌日彼女が車で一日町を案内してくれた。
夕方ホテルに戻ってきて、「ちょっと用事があって部屋に戻るけど一緒に来る?」と言ったら「男の人の部屋に行けるわけないでしょ」と返ってきた。いえ、そんなつもりはまったくないんですけど・・・・。
部屋に戻ると部屋はきれいに掃除されていた。
ベッドの上のデイパックを見ると、・・・・何かが違う。チャックの位置がいつもと違う!中身を確かめると現金100ペソとトラベラーズチェックが一枚無くなっていた!やられた!
何度も何度も確認するけどやっぱり無い。たぶんルームサービスだろう。すぐにフロントへ走る。
「部屋に置いていた荷物からお金を盗まれたぞ。警察を呼んでくれ」
「そんなことは無い。14年もここで働いているけど盗難なんて一度もあったことがない」
「自分の荷物だ。間違えるわけはなかろう」
「いや、なんかの間違いだ」
フロントのおやじは全然とりあってくれない。今まで旅は長くやってきたけど盗難なんて初めてで、まるで背中に冷水を浴びせられた気分だ。リスは心配そうに見ている。
すぐにトラベラーズチェックの会社に電話して、トラベラーズチェックは再発行してもらえることになった。
しかし、100ペソは無くなった。

リスに警察まで連れて行ってもらう。外は夕立が降り出した。
今日の楽しい気分が台無しになってしまった。警察ではリスも説明してくれるが、何を話しているかわからない。しばらく二人で椅子に座って待っていたが何も進まない。彼女は夕方に友人と待ち合わせがあったが、とっくにその時間は過ぎていた。
ここで被害届けを出したところでお金は戻ってこないだろう。もう、いい。これ以上彼女に面倒かけるわけにはいかない。
高い授業料を払ったということにしよう・・・と思うことで無理矢理自分を納得させた。

TOPに戻る

inserted by FC2 system