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世界一周ツーリング日記  1995年6月〜1998年6月
16 メキシコ中央部 1995/8 メキシコ
ラパスからメキシコ湾対岸のマサートラン行きのフェリーに乗る。

バイクを船倉に入れて客室に上がっていくと、まだ出発まで時間があるのにすでにメキシコ人で埋まっていた。一番安いクラスだったのでみんな金が無さそうな顔をしている。みんな床や通路に毛布を敷いてごろごろしているので歩くのも大変だ。
客室はエアコンが効いていないのですごく蒸し暑く、ぬめりとした空気が淀んでいる。それだけで酔いそうだ。
階上のカフェテリアの方がやや涼しいのでそこに長居をする。

その日の夕焼けはものすごく美しかった。甲板の上で暗くなるまで眺めてしまった。
しばらくすると外海に出たのか、船は大きく揺れ出した。いかん、気分が悪くなってきた。
船の中はどこも蒸し暑く、重苦しい空気でますます気分が悪くなってきた。船酔いがひどくなってきたので新鮮な空気があるところを求めて船内をうろつく。すると一ヶ所だけ階段の踊り場に外の新鮮な風が通る所を発見してそこで寝ることにする。窓の外がパッ、パッと明るくなる。雷か。揺れるはずだ・・・・・。
朝10時にようやくマサートランに着いた。地獄の18時間だった。

一年前に知り合った友人を訪ねるために200キロ程北上する。もらっていた住所を頼りに探すがまったくわからない。
そうだタクシーに聞いてみよう。「ここの住所はどこですか?」と客待ちのタクシーに住所を書いた紙を見せる。
運転手はしばらく考えていたが「こりゃ遠くてわかりづらいな」と返ってきた。ここまで来て諦めるわけにはいかない。
「料金払いますんで連れて行ってもらえますか?」「よし、ついてきな」交渉成立。
その町は意外と大きく、タクシーは右に左にと交差点を曲がりながらどんどん走っていく。そして小さな住宅街の中で止まった。
どうやらここらしい。こりゃ絶対にわからんわ。

小さいその家の前に少年が立っていた。
「サビーナはいますか?」「いや、いないよ」「前にここの住所をもらったんですけど」「今はここには住んでいないんだ」。
あーいないのか。
タクシーの運転手は役目を終えて安心したのか帰っていった。
「別の住所を知ってるからちょっとおいでよ」と家の中に招き入れられた。
レンガ造りの3mx3mぐらいの質素なキッチン兼居間だった。
「昼は食べた?良かったら食べていかない?」
ちょうど昼食時に来てしまったらしい。ちょっと悪い気がしたが、遠慮なくいただく。
彼の妹らしき女性が追加に卵を焼き始める。
トルティージャがおいしい。食べながら自分の厚かましさがおかしかった。
彼らは英語をしゃべらないのでカタコトのスペイン語で会話をする。彼は学校で建築を習っているというのが判った。
彼らに礼を言って、出発する。

100キロ南へ戻り、50キロ内陸へ向かう。すごい山奥の先に人口8000人という村があった。
書いてもらった住所と地図を頼りに探すがよくわからない。村の人にも尋ねてみるがわからない。バイクに乗った日本人が小さい村をウロウロしているので、みんななんだなんだと寄って来る。彼らに見せた地図があっちへ行ったりこっちへ来たりしている。
そして「ついてこい」という男性が現れその後を追っていくと、そこは警察だった。
署内の壁に20丁ぐらいの銃が立てかけてある。
彼らもわからなかった。次に連れて行かれたところは、なんと監獄だった。鉄格子の向こうにいる男に警官が何か聞いている。
その後小銃を持った警官4人を乗せたトラックのパトカーの後をついていくと、そこに彼女の実家があった。

家には彼女の母親らしき中年の女性が一人いた。
「サビーナはいますか?」「・・・・いや、いないよ!」と緊張した返事が返ってきた。変な日本人が警官連れてやってきて「おまえの娘はどこだ?」という感じで訪ねてきたので彼女も当惑している。
事情を知っているのは自分だけなので、自分が説明するしかない。
「誰か英語しゃべる人いますか?」と聞くとみんな一斉に首を横に振る。
「なんで彼女を知っているの?」「一年前にマサトランで会ったんですよ。そして今メキシコを旅しているので会いに来たんです。」
めちゃくちゃなスペイン語で必死に説明すると、ようやくみんなすべてを理解してくれた。 母親の態度も軟化した。サビーナは今はアメリカに行っていて当分帰ってこないらしかった。警官たちはやれやれという顔をして去っていった。まったく人騒がせな日本人だ。

村のセントロに戻ると、みんな「どうだった?」という顔をしていた。
「家まで行ったけど結局彼女はいませんでした」というと、みんな「それは残念だったね」という顔になった。
メキシコ人は親切だ。サビーナには会えなかったけど、今日はいい体験をさせてもらった。
今日はもう遅いのでこの村に泊まっていくことにしよう。
安いホテルにチェックインして外の屋台に夕食を食べに出た。静かな村だ。
タコス屋台のオヤジも「今日は残念だったね」という顔をしていた。

夜は暑くてなかなか寝付けなかった。夜中に喉が渇いたので、真っ暗な廊下を懐中電灯の光で歩くと床にフロントのおじさんが寝ていたので驚いた。確かに床はひんやりと冷たくて気持ちいいだろう。一緒に添い寝しようかと思ったくらいだ。


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