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世界一周ツーリング日記  1995年6月〜1998年6月
11 アンカレッジ 1995/7 アメリカ

10時半にフェアバンクスを出発する。すごくいい天気の中200キロほど走るとデナリ国立公園に着いた。目的はマッキンリー山を見たいからだ。
まずビジターズセンターに行くとずらっと人が行列を成していた。どうやら公園内シャトルバスと公園内キャンプ場のチケットを買うためらしい。
キャンプ場はすでに明日の分まで売り切れだったので諦めて一般車乗り入れ可能な所までバイクで進んでみる。
公園内の山はそんなに高くはなく、緑は多く、川ではカリブーが草を食んでいる。
よーく見ると遠くの山々の、そのまた向こうに、白く尖った大きい山がある。
マッキンリー山だ! かなり遠いので6000メートルという高さは実感できないが、やはり周りの山とはまったく違って見えた。
のんびりと公園内の道を引き返すと、前方に車が止まっていたのでなんだろうと近くの林の方を見てみると2頭のムースがいた。
「なんじゃい」というような顔をしていたが、あんまりこっちがジーッと見るのでとうとう林の中に消えていった。
公園を出て、ゲリラ的にキャンプしようと空き地に入り込んだがそんなとこにもたくさんのキャンピングカーがいたみんな考えることは同じだ。じゃがいもだけの夕飯を食べる。味付けはケチャップと塩だけだ。

現地のATMを利用しているが利用する度にドルで書かれた残高が異様に少なくなっているのを不思議に思っていた。
ハッ、と銀行の残高がなぜ減るのかが判った!円安だ!なんと一円円安になると700ドルも無くなってしまう!なんてこった。こっちは一日6ドルのキャンプ場代も惜しんで野宿しているのに!

翌朝3時半に起きる。ちょうど夜明け前で雲がオレンジ色に染まっていた。かなり冷え込んでいてテントの外は4〜5℃ぐらいしかない。テントを片付けてもう一度デナリ国立公園の中へはいっていく。すると山の陰からいきなり真っ白いマッキンリー山が現れた!
「うおー!」と声が飛び出し、目は釘付けになり、体は動かなかった。目が潤んできた。
青い空に眩しいほどの白いマッキンリー山。上には白い満月がほのかに光っている。白く神々しいその姿はまさしく王様で、周りの山々を家来のように従えていた。昨日の風景とはまったく違って見える。
なんとラッキーなのだろう。この夏の時期は殆ど雲に隠れて見えないらしいのに。

デナリ公園を離れてアンカレッジへ向かうともっと近くから見ることができた。周りの山とは別格で白い巨人という感じだ。あの山のどこかに植村直己さんが眠っているのか?

夕方アンカレッジのYHに着いた。ちょっと長く滞在しよう。

カナダのバンクーバーを出てすぐトラブルを抱えていたガソリンコックを修理しようとホンダの代理店に行ってみたら部品代60ドル、送料20ドルで4日かかると言っていた。内部の部品だけの販売は無く丸ごと交換しなければならなかった。お金もかかるし、時間もかかるのでダメもとで自分で修理してみることにした。トラブルの原因はだいたい察しがつく。タンクからガソリンコックを取り外し、カシメをヤスリで削り取ると目当ての部品に辿り着いた。やっぱりゴムパッキンが破れていて予備タンクの分がそのまま流れ出ていた。といあえずそのゴムパッキンを裏返しにつけて影響が出ないようにし、無理やりまたカシメをするとバッチリになった。完璧だ、と自分に酔ってしまいたいくらいだ。

アンカレッジ周辺でも見所は多く、ツーリングや山登りをしてのんびりする。
YHにフェアバンクスで会った自転車旅行の清田くんがやってきた。彼の横にはもう一人の日本人がいた。彼は石田さんといい、これから、今から自転車世界一周をします!という青年だった。しかし彼は世界一周の不安に押しつぶされそうになっていてまるでウサギような目をしていた。彼からはまだふてぶてしさが感じられず、日本人のやさしさが溢れていた。
自転車だとどれだけがんばっても次の町に辿り着かないことがあるので野宿をしなければならない。アラスカで野宿すると熊が出るぞ、と脅かすとウサギの目がさらに小さくなった。

ああ、しかし彼は無事自転車世界一周をやり遂げてしまった。彼の帰国後久しぶりに会ったら色んな修羅場をくぐってきた男の目になっていた。
しかも世界一周の本まで出してしまった。しかもしかも、雑誌ビーパルに連載も持ち、現在作家として活躍している。。


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