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世界一周ツーリング日記  1995年6月〜1998年6月
10 アラスカハイウェイ5 1995/7 カナダ

4時過ぎに起きる。今日は天気が悪くて寒い。
カッパを着て走り出す。
今までに無く大きな峠に差し掛かった。かなり急で、バイクのギヤを3速、2速と変えながら昇っていく。同時にぐっと寒くなってきた。
もう木は無くなり、草しか生えていない。
峠の頂上には雪が残っているではないか。
鼻水が出てきた。
その峠を越えると、その先にはもう山は無かった。道も真っ直ぐに伸びている。

どうやら湿原になったらしく、所々白や紫の小さな花が咲いている。
アップダウンの無くなった道を走っていると道端に小さくプルドーベイという看板が現れた。
プルドーベイ!やった、とうとう北極海の町に着いたぞ!
しかし辺りは今までと同じ景色があるだけで海らしきものはまったく見えなかった。
海はどこだ?と探しつつ町の中へと入っていくと、そこは町というより工事現場に近かった。
建物はすべて高床式のトレーラーハウスで、埋立地みたいな所にそれらが整然と並んでいる。遠くには工場も見える。
一軒のトレーラーハウスにホテルという看板が掛かっていた。
バイクを降りるとウワーッと一斉に蚊が集まってきた。
中をのぞいてみるとそこは簡易ホテルという感じで、フロントと食堂が一緒になった部屋がありそれに客室用のトレーラーハウスがつながっていた。
どうやら北極海は石油掘削をやっている工場の中にあるらしく、このホテルで北極海ツアーを行っていた。
ここまで来て最後は自分の足で北極海を見たかったが仕方が無い。
決して安くはなかったがツアーに申し込み、出発の時間までレストランでたまっていた日記を書いて時間をつぶす。
コーヒーはおかわり自由なので、冷えた体を温めるべく、ツアー代金を取り戻すべくガブガブ飲む。
外を少し散歩したかったが外は蚊がすごいので出るにでられない。

ようやく時間がきたら結局客は自分ひとりだけだった。
運転手兼ガイドのテリーとフォードのピックアップトラックに乗って工場地帯の中に入っていく。
「ここは11の石油会社が共同で運営していて、3000人の人間が働いているんだ。」
こんな最果ての地に3000人!と素直に驚いてしまった。
駐車場にはそれぞれの場所に電気コードがぶらさがっていた。どうやら冬は車を駐車している間電気ヒーターで暖めるためのものらしかった。冬はマイナス数十℃!
彼の説明を聞きながら工場の奥へ進んでいくと、前方に海が見えた。
「これが北極海・・・・?」
そういわれてもまわりは工場だらけでイマイチぴんとこない。
海に突き出すように埋め立てられた道を通って先端の波打ち際に着いた。
車から外に出ると数百匹の蚊が寄ってきた。
その青い海の水を舐めてみると、まったく塩からくないので驚いた。ポカリスウェットよりも塩辛くない。アクエリアスネオぐらいか。これならゴクゴクと飲めそうな気がする。
「水っぽいだろう?ここにはたくさんの川が流れ込んでいるからなんだ。」

蚊を振り払って車の中に戻る。それでもかなりの数の蚊が侵入してきた。
一匹、一匹殺して出発する。
目的の北極海を見てしまったので、ガイドのテリーは普通の会話を始めた。
彼のおじいさんはここ以上に辺鄙なバッファローという村でチーフをしているらしい。どうりで東洋人みたいな顔をしていると思った。
その北極海に面したエスキモーの村へは道は無く、船か飛行機でしか行けない。

「ここから北へ2000キロ行くと北極点だ」と最後に彼は言った。

北極海を無事見る事ができたので、もうここではすることが無くなってしまった。ここに一泊していこうかと思っていたがあまりの蚊の多さにうんざりし、かといってホテルに泊まるつもりはさらさらないのでフェアバンクスへ向かうことにする。
バイクに戻ると凄まじい数の蚊がバイクにたかっていた。
パンパンパンと払って走り出す。この町のガソリンスタンドへ行くと、ガソリンの匂いにつられてか、もっとたくさんの蚊がいた。
店員は別に平気な顔をしてガソリンを入れてくれたが、この町の人達はどうもないのか、それとももう慣れているのだろうか?

町を離れ、寒いのでカッパを着ようと停車をしたら数百匹の蚊に囲まれた。 じっとしていては刺されるので動きながら、歩きながらカッパを着る。彼らはびっくりするほど獰猛で、服の上からやカッパの上からでも刺そうとする。
目の前でパチンパチンと手を合わせると一回につき5匹はつぶれている。
蚊から逃げるようにプルドーベイを後にする。

また同じ道を南へ、南へフェアバンクスへ向かう。
21時頃、比較的蚊が少ない山の中で野宿をする。

翌朝、快晴の中を走り、昼過ぎ無事にフェアバンクスに戻ってきた。
1600キロ2泊3日北極海ダートの旅だった。
また同じYHに泊まる事にする。
バイクを見るとものすごく泥で汚れていたのでまずは洗車からだ。
YHにはまた新しい日本人がいた。
その一人はなんと中米のパナマから自転車!でやって来ていた。
彼は清田君といい、自転車で世界一周をしている途中だった。普通自転車の人はアラスカをスタート地点にするらしいが、彼は中米のパナマからずっと向かい風の中北上してきたらしい。実家は熊本市でしかも自分と同じ会社で出稼ぎして資金集めしていたらしい。みんな考えることは同じだなと思う。
宿の日本人旅行者とずっと話していたらあっという間に23時だった。


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