夜中？に目が覚めた。もう外は日が昇るぐらいに明るかった。
時計を見ると、午前2時
どんどんと北上しているので、だんだんと夜が短くなってくる。
今日は良い天気だ。
6時に起き、朝のヒンヤリとした空気の中を走る。他に車はいなくてまるで森と一体化したようだ。
森の平原の中に所々沼が現れる。
その沼の中に野生のムースが顔を水の中に突っ込んで水草を食べている。

カナダからまたアメリカに入った。
道路標識もキロメートルからマイルに変わった。
アメリカ側のアラスカハイウェイはひたすら直線である。
いったい何キロ、何十キロ続くのかと途方に暮れてしまうぐらいだ。
道路工事現場では思わず「でけーっ！」と声が出てしまうほどの、バケモノみたいな車が走っている。なかにはサンダーバード2号そっくりな車もいるではないか。

アラスカ州に入ると道路標識に北斗七星が描かれてあった。
アメリカ空軍基地の横を通り過ぎると、フェアバンクスに着いた。今まで小さな村しかない所を通ってきたので、久々の大都市に面食らってしまう。
郊外のこじんまりしたYHに泊まることにする。
このYHには日本人女性が長期滞在していた。
彼女はフェアバンクスでツアーガイドをしていた。
夏はマッキンリー山があるデナリ国立公園で、冬はオーロラを見に来る観光客を相手に仕事をしているらしい。

アラスカはカヌーをする人にとっても聖地らしく、このYHにも2人の日本人がユーコン川を下り終えて休息していた。
今年はあまり雨が降らず、川の水量が少なくて大変だったらしい。
一人でユーコン川を川下りし、夜は河原でキャンプするという生活をしているとやっぱり何度か熊と遭遇することもあるといっていた。
バイクの旅も孤独だが川下りはさらに孤独だろう。まったく町も人もいないところを、一人で何週間も過ごさなくてはならない。
僕にもこんな旅ができるだろうか？

フェアバンクスの夜は暗くならないから、彼らと話しをしていたらあっという間に12時をまわっていた。