世界中を旅したいとは昔から思っていた。
色んな物を、自分の目で見て、肌で感じたかった。
6歳で自転車に乗り始めた。それまで歩きの範囲ででしか知らなかった世界が、一気に広がった。自分でペダルを漕がねばならないが、自分に翼が生えたようなものだった。
16歳でバイクの免許を取りバイクに乗り始めると、翼にジェットエンジンが付いたみたいで更に大きく世界が広がった。
最初はアメリカにすごく行きたかった。
中学の頃に見た、アメリカの砂漠を一直線の道がずっと地平線まで走っていく写真が頭からはなれず、そこに自分の身を置いてアメリカの大きさを体感してみたかった。
社会人になっても、25歳までには!とずっと思っていた。
24歳になった時そのチャンスは訪れた。
会社をすっぱりと辞めて、アメリカツーリングに行った。
ロスアンゼルスで中古のバイクを買い、2ヶ月で2万4000Km走ってアメリカを一周することができた。
当時まったく英語が解らずえらく苦労をした。ハンバーガー屋で「トラベラーズチェックが使えるか?」と聞いたら、ストロベリーシェイクが出てきたくらいだ。
色々と出来事はあったが、なんとか無事に帰って来れた。
実際に行ったアメリカは、やっぱり大きかった。
帰国してからの数年間はオフロードレースに(当時はエンデューロレースが盛んだった)精を出したりして楽しかったが、いつかは世界へという思いはずっと心の中にあった。
30歳を目前にして、このままでは行けなくなるかもしれないという焦りを感じ、会社を辞め、やり残していた日本一周を済ませ、資金稼ぎの為に期間従業員(いわゆる出稼ぎ)をやった。
2年程働いて300万貯まり、残っていた貯金と合わせて実行可能な金額に達することができた。
最初は、とにかく世界中を旅行したいという思いだけで、手段はバイクでもバスでも何でも良かった。
しかし94年にメキシコをバス旅行した時に、やっぱり自分はバイクだなと思った。
箱の中に入っているだけで、移動している実感が無かったからだ。
95年1月から本格的に準備を始めた。少しでも費用を節約しようというのもあるが、バイク作りなんていう楽しい事は自分でやるつもりだった。
エンジンのオーバーホール、フレーム補強、ビッグタンクの取り付けなど溶接以外は殆ど自分でやった。近所のバイク屋さんに協力していただき、毎日のように通い改造は進んでいった。夜は夜でバイクの書類作りがあった。
梱包したバイクと国際ナンバープレート
バイクとすべての荷物を梱包し、地震の後がまだ生々しい神戸の港に送り込んでやっと準備が完了した。
95年6月1日、日本を発つ。
バイク世界一周の旅が始まる。
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